更新日:2026年7月28日
ベトナムで人材を採用するとき、最初から現地法人を設立する方法のほか、雇用代行(EOR)を利用する方法があります。どちらが適しているかは、人数だけでなく、営業・契約主体が必要か、事業ライセンスが必要か、どの程度の期間ベトナムで活動するかによって決まります。
ベトナム雇用代行(EOR)とは
EOR(Employer of Record)は、ベトナムのサービス提供会社が法的な雇用主となり、顧客企業のために現地人材の雇用契約、給与、社会保険、PIT、入退社などを運用するサービスです。日々の業務指示や成果管理は顧客企業が担う設計が一般的です。
EORはベトナム法上の独立した会社形態の名称ではなく、複数の契約と実務で構成されるサービスです。契約当事者、指揮命令、知的財産、秘密保持、個人情報、費用負担、終了時の扱いを契約で明確にします。
現地法人設立とは
現地法人を設立すると、自社がベトナムの雇用主となり、従業員と直接雇用契約を結びます。自社名義で事業契約、請求、銀行取引、投資、許認可、採用・組織運営を行える一方、会計、税務、監査、労務、社会保険、報告などの継続的な管理責任を負います。
EORと会社設立の比較表
| 比較項目 | 雇用代行(EOR) | 現地法人設立 |
|---|---|---|
| 法的な雇用主 | EOR提供会社 | 自社のベトナム法人 |
| 開始前の準備 | サービス契約と採用条件の設計が中心 | 外資規制、法人登録、資本、口座、税務・労務体制 |
| 初期費用 | 比較的抑えやすい | 設立支援、書類、資本、オフィス、許認可など |
| 継続費用 | 実費と月額管理費など | 会計、税務、監査、労務、オフィス、管理人員など |
| 少人数採用 | 始めやすい | 固定管理費の比重が高くなりやすい |
| 顧客との契約・請求 | 別途契約主体を設計する必要がある | 事業範囲・許認可の範囲で自社法人が行う |
| ライセンス事業 | EORだけでは自社の営業許可にならない | 必要な事業ライセンスを取得して行う |
| 人事制度 | 提供会社の雇用実務との調整が必要 | 法令の範囲で自社制度を直接運用 |
| 撤退・縮小 | 契約と雇用終了条件に沿って対応 | 人員整理に加え、休眠・解散などの手続き |
EORが向いているケース
- ベトナム市場を検証するため、まず少人数を採用したい
- 法人設立の判断前に、営業支援、開発、調査などのチームを置きたい
- 短期間のプロジェクトで現地人材が必要
- 給与、社会保険、PIT、入退社の現地運用を外部へまとめたい
- 将来の法人化を前提に、採用を先行したい
会社設立が向いているケース
- ベトナムで中長期に事業を行う方針が決まっている
- 自社名義で顧客・仕入先と契約し、売上を計上・請求したい
- 在庫、輸出入、設備投資、店舗、工場などを持つ
- 事業ライセンスや投資プロジェクトが必要
- 採用人数が増え、独自の人事制度と管理組織を構築したい
費用を比較するときの考え方
EORは、従業員の給与、雇用主負担保険、PIT関連費用、福利厚生、採用費、月額管理費などで構成されます。契約終了、退職、賞与、給与改定、追加証明書などが別料金かも確認します。
会社設立では、設立費だけでなく、オフィス、会計・税務、法定監査、給与・社会保険、ライセンス更新、管理人員、撤退時手続きを含む年間総費用で比較します。
人数が少ない間はEORが合理的でも、組織が拡大すると法人の固定費を吸収しやすくなります。ただし、単純な人数の損益分岐だけでなく、売上契約、投資、許認可、ブランド、管理権限を含めて判断してください。
EOR利用時に確認する契約項目
- 法的雇用主、顧客企業、従業員の三者の役割
- 採用条件、試用、給与、賞与、昇給、休暇
- 日々の指揮命令と人事評価
- 社会保険、PIT、立替費用、請求通貨
- 秘密保持、知的財産、データアクセス
- 退職、契約終了、補償、紛争対応
- 将来の現地法人への転籍方法と費用
従業員情報を日本本社や海外システムへ共有する場合は、2026年1月施行の個人データ保護法91/2025/QH15を含むデータ保護要件も確認します。
加えて、EORという名称だけで判断せず、ベトナム側の契約法人、署名権限、実際の運営体制を確認します。従業員が行う営業・契約・管理活動によっては、恒久的施設、税務、事業ライセンスなどの論点が生じるため、雇用契約とは別に事業活動を検討します。
EORから現地法人へ移行する流れ
- 事業計画、売上契約、採用計画から法人化の時期を決める
- 外資規制、資本金、所在地、必要ライセンスを確認する
- 会社設立と税務・銀行・人事労務体制を準備する
- 転籍対象者へ条件、時期、勤続・休暇などの扱いを説明する
- EOR契約終了と新会社への入社手続きを連動させる
- 給与、保険、PIT、貸与品、データを照合する
法人設立完了と従業員の転籍日を同日にしようとすると、銀行・給与・保険の準備が間に合わないことがあります。設立と稼働準備を分けた移行計画が必要です。
よくある質問
EORを使えばベトナムで営業できますか
EORは主に雇用の仕組みです。顧客との契約、請求、輸出入、店舗運営、条件付き事業の許可を自社に与えるものではありません。営業活動の主体を別途確認します。
EOR従業員へ日本本社が直接指示できますか
日々の業務指示は顧客企業が担う設計が一般的ですが、雇用上の命令、評価、懲戒、退職などの権限分担を契約と運用で明確にします。
最初から会社を設立すべきですか
売上契約、投資、許認可、長期採用が明確なら会社設立が適します。市場検証や少人数の先行採用であれば、EORから始めて法人化を判断する方法があります。