更新日:2026年7月28日
ベトナムの給与計算では、雇用契約に記載した給与だけでなく、勤怠、残業、手当、社会保険、個人所得税(PIT)、休職・退職などの情報を同じ締切で確定する必要があります。計算式が正しくても、入力情報の更新漏れや承認遅れがあれば、支給額は正しくなりません。
ベトナム給与計算の基本フロー
- 従業員マスターの更新:入退社、昇給、手当、扶養、銀行口座などの変更を締めます。
- 勤怠の締め:出勤、欠勤、有給休暇、残業、夜間勤務、休日勤務を確定します。
- 総支給額の計算:基本給、固定手当、変動手当、賞与、残業代などを計算します。
- 控除額の計算:社会保険、健康保険、失業保険、PIT、その他の適法な控除を反映します。
- 手取り額と会社負担の確認:手取り額だけでなく、会社負担保険料を含む総人件費を確認します。
- レビューと承認:前月差異、例外者、マイナス支給、退職者を重点確認します。
- 振込と給与明細:承認後のデータで銀行振込を行い、給与明細を交付します。
- 申告・会計との照合:保険・PIT申告、給与台帳、銀行実績、会計仕訳を一致させます。
計算前に集める情報
| 情報 | 確認内容 | 主な担当 |
|---|---|---|
| 雇用条件 | 基本給、手当、試用期間、契約更新、給与改定日 | 人事 |
| 勤怠 | 実働、休暇、欠勤、残業、休日・夜間勤務 | 現場責任者 |
| 変動支給 | 賞与、インセンティブ、立替、課税対象となる福利厚生 | 人事・経理 |
| 保険 | 加入区分、算定基礎、増減員、休職・退職 | 人事・労務 |
| PIT | 居住者区分、扶養、控除、社外所得、入退社時期 | 人事・税務 |
| 支払情報 | 銀行口座、支給日、承認者、振込ファイル | 経理 |
残業代と夜間勤務の計算
労働法45/2019/QH14では、時間外労働の最低割増率は通常勤務日150%、週休日200%、祝日・有給休暇日300%とされています。夜間勤務には通常日の賃金に対する追加支給があり、夜間の時間外労働ではさらに加算が必要です。
実務では、曜日区分、祝日カレンダー、勤務シフト、代休の扱いを勤怠システムと給与計算で一致させます。日本本社の計算ロジックをそのまま移すと、現地法や就業規則との不一致が起きることがあります。
給与明細と支払日の注意点
労働法では、雇用主は給与を直接、全額、期限どおりに支払うことが原則です。給与支給のたびに、給与、残業・夜間勤務の賃金、控除額とその理由が分かる明細を従業員へ示す必要があります。
月給は月1回または半月に1回とし、支給日は周期的な日として合意します。銀行振込を利用する場合、承認済み給与台帳と振込データが一致しているか、作成者と承認者を分けて確認します。
2026年の最低賃金とPITを確認する
2026年1月1日からの地域別最低賃金は、地域Iが月額5,310,000 VND、地域IIが4,730,000 VND、地域IIIが4,140,000 VND、地域IVが3,700,000 VNDです。適用地域は雇用主が事業を行う所在地などの規定に従って判定します。
2026年のPITでは、居住者の給与所得に関する本人控除は月15.5百万VND、扶養控除は扶養者1人あたり月6.2百万VNDです。給与所得の月次課税所得は、10百万VND以下5%、10百万超30百万VND以下10%、30百万超60百万VND以下20%、60百万超100百万VND以下30%、100百万VND超35%の5段階です。居住者区分、扶養資料、適用年度を確認し、旧年度の表を上書きしないよう変更履歴を残します。
社会保険・健康保険の算定基礎について、ベトナム社会保険は2026年7月1日から基準となる月額の上限を50.6百万VNDと案内しています。ただし、対象となる保険、国籍、雇用契約、失業保険の取扱いは同一ではありません。従業員区分ごとに適用を確認してください。
企業が注意すべき7つの点
- 人事、勤怠、給与で従業員番号を統一する
- 入退社や昇給の締切と承認方法を毎月固定する
- 残業・休日・夜間勤務を別々の区分で保持する
- 前月比と前年同月比で総支給額・控除額の異常を確認する
- 手修正には理由、申請者、承認者、反映月を残す
- 給与台帳、振込、保険、PIT、会計仕訳を月次で照合する
- 給与データをメール添付だけで回さず、権限と保存期間を管理する
月次チェックリスト
- 入社、退職、休職、復職、昇給の反映漏れがない
- 勤怠の未承認者、残業上限、マイナス休暇を確認した
- 最低賃金と保険算定基礎の変更を確認した
- PITの居住者区分、扶養、控除資料を確認した
- 前月差異と例外計算に説明を付けた
- 給与承認後に振込ファイルが変更されていない
- 申告額、会計仕訳、銀行実績が一致した
よくある質問
給与をUSDで決めてもよいですか
ベトナムで働く外国人については外貨で定められる場合がありますが、雇用契約、支払通貨、換算方法、会計・税務処理を個別に確認する必要があります。ベトナム人従業員についてはVNDを前提に設計します。
締日後の昇給や勤怠修正はどう処理しますか
当月再計算か翌月遡及調整かを社内規程で決め、対象月、差額、承認者を記録します。申告済み保険・PITへの影響も同時に確認します。
給与計算を外注すれば会社の確認は不要ですか
最終承認は雇用主側に残ります。委託先の計算と、社内の人事判断・勤怠承認を分けることで、責任と証跡を明確にできます。
参考情報
- 労働法45/2019/QH14(給与支払・残業代)
- 政令293/2025/NĐ-CP(2026年地域別最低賃金)
- 決議110/2025/UBTVQH15(PIT人的控除)
- 2026年PITの控除・税率(ベトナム政府)
- 2026年7月以降の社会保険・健康保険算定基礎(ベトナム社会保険)