更新日:2026年7月28日
勤怠管理、社会保険、個人所得税(PIT)は別々の手続きに見えますが、実務では同じ従業員情報と給与データを使います。入社日、休職、残業、給与改定の一つの更新漏れが、給与・保険・税務の複数箇所へ波及します。
勤怠・社会保険・PITが連動する理由
| 従業員の変化 | 勤怠・給与 | 社会保険 | PIT |
|---|---|---|---|
| 入社 | 初月の日割り、試用条件 | 加入対象と登録期限 | 居住者区分、扶養、税コード |
| 昇給 | 適用日、遡及差額 | 算定基礎への反映 | 課税所得の増加 |
| 休職・欠勤 | 無給日、手当、休暇残 | 拠出要否、給付手続き | 当月課税所得 |
| 退職 | 最終給与、未消化休暇、控除 | 脱退・給付関連手続き | 源泉徴収、年次精算資料 |
ベトナム勤怠管理の基本
労働法45/2019/QH14では、通常の労働時間は原則として1日8時間、週48時間を超えない範囲です。週単位で設定する場合は1日10時間までとしつつ、週48時間以内に収めます。
時間外労働は、原則として従業員の同意を得たうえで、通常労働時間の50%以内、週単位運用では通常勤務と残業の合計が1日12時間以内、月40時間以内、年200時間以内です。一定の業種・事情では年300時間までの枠がありますが、対象要件と通知手続きを確認する必要があります。
勤怠データには、単なる出退勤だけでなく、通常勤務、残業、週休日、祝日、夜間勤務、有給・無給休暇を別区分で保存します。承認前データを給与へ連携しないことも重要です。
社会保険実務で確認すること
2025年7月施行の社会保険法41/2024/QH15と関連政令により、対象者、算定基礎、登録、給付の運用を確認します。標準的な強制社会保険の対象者について、社会保険部分には従業員の退職・遺族基金8%、雇用主の退職・遺族基金14%、疾病・出産基金3%、労災・職業病基金は通常0.5%といった構成があります。健康保険と失業保険は、それぞれの対象・算定基礎を別に確認します。
外国人従業員は対象制度と負担の組み合わせが異なる場合があります。雇用契約期間、企業内異動、年齢、国籍、国際協定などを確認し、ベトナム人と同じ設定を自動適用しないようにします。
ベトナム社会保険によると、2026年7月1日から基礎・参照給与は月2.53百万VNDとなり、これに連動する強制社会保険・健康保険の月額算定基礎上限は50.6百万VNDです。失業保険を含む全基金へ同じ上限を機械的に適用せず、制度別に確認します。
雇用主は、従業員が強制社会保険の対象となった日から30日以内に加入書類を提出することが原則です。入社手続きと保険登録を別の担当者が持つ場合は、入社日を起点とした共通チェックリストを使います。
2026年の労働登録
政令318/2025/NĐ-CPは2026年1月1日に施行され、強制社会保険の対象者については、労働登録・情報変更の手続きが2026年7月1日から段階的に実施されます。従業員情報の正確性と更新を、保険データだけでなく労働者データベースとの連携も含めて確認する時期です。
個人所得税(PIT)の月次実務
居住者の給与所得は、課税所得から認められる控除を差し引き、累進税率で計算します。2026年の人的控除は、本人が月15.5百万VND、扶養者1人あたり月6.2百万VNDです。
| 月次課税所得(控除後) | 税率 |
|---|---|
| 10百万VND以下 | 5% |
| 10百万超30百万VND以下 | 10% |
| 30百万超60百万VND以下 | 20% |
| 60百万超100百万VND以下 | 30% |
| 100百万VND超 | 35% |
月次計算では、次の情報を管理します。
- 居住者・非居住者の判定根拠
- 給与、賞与、現物給付、会社負担費用の課税区分
- 強制保険などの控除
- 扶養者の登録と適用開始月
- 複数の給与支払元や海外給与の有無
- 入退社時の源泉徴収資料と年次精算の委任
2026年7月1日施行の政令253/2026/NĐ-CPには、給与所得の計算、源泉徴収、年次精算などの詳細が規定されています。旧年度の表や控除額をテンプレートに残さないよう、年度更新の責任者を決めてください。
3つの業務をつなぐ月次スケジュール
- 変更受付:入退社、給与改定、扶養、休職などを締日までに登録します。
- 勤怠承認:未打刻、残業、休暇、夜間・休日勤務を確定します。
- 給与計算:支給・控除を計算し、前月差異と例外を確認します。
- 保険・PIT確認:対象者、算定基礎、控除、源泉額を照合します。
- 会社承認:給与台帳、総人件費、振込額、申告予定額を承認します。
- 支給・申告:振込、給与明細、所定の申告・納付を行います。
- 月次照合:給与、銀行、会計、保険、PITの差異を解消します。
よくあるミスと対策
| よくあるミス | 対策 |
|---|---|
| 退職者が保険・給与マスターに残る | 退職承認から給与、保険、IT、貸与品まで一つのチェックリストにする |
| 残業の曜日区分が給与と違う | 勤怠コードと給与コードの対応表を固定する |
| 扶養控除の開始月や証憑が不明 | 登録日、適用月、証憑、承認者を従業員マスターに記録する |
| 申告額と会計仕訳が一致しない | 支給後の月次照合を締め作業に含める |
| 法改正後も古い料率・控除を使用 | 年度更新テストと変更承認の記録を残す |
よくある質問
社会保険料率は全従業員で同じですか
同じとは限りません。ベトナム人と外国人、契約形態、適用対象制度によって異なるため、従業員属性ごとに判定します。
勤怠システムを導入すれば残業管理は完了しますか
システムだけでは完了しません。残業申請、上司承認、法定上限、給与コードへの連携、修正履歴まで運用として設計する必要があります。
PITの年次精算だけ外部委託できますか
可能ですが、月次の給与・源泉データ、扶養資料、他の所得、入退社情報が整っていることが前提です。年末にまとめて修正するより、月次で差異を解消する方が負担を抑えられます。
参考情報
- 労働法45/2019/QH14
- 社会保険法41/2024/QH15
- 政令158/2025/NĐ-CP(強制社会保険)
- 政令253/2026/NĐ-CP(個人所得税)
- 2026年7月以降の算定基礎(ベトナム社会保険)
- 2026年PITの控除・税率(ベトナム政府)