ついに7月30日に「ホーチミン高島屋」がオープンしました。「高島屋」海外店舗は、シンガポール、上海に続いて、今回のベトナムで3店舗目です。日本の百貨店業界では「三越伊勢丹ホールディングス」、大丸松坂屋百貨店・パルコを傘下に持つ「J.フロントリテイリング」に次いで、「高島屋」は業界3位の売上高です。
ところで、海外の「高島屋」は成功しているのでしょうか? 気になったので調べてみました。
今回は、海外の「高島屋」の歴史を振り返るとともに「ホーチミン高島屋」が今後どのような「百貨店」になっていくのか、予想も立ててみました。
「高島屋」の戦略、海外店舗の位置づけ
「高島屋」は長期目標として、2020年度目標を掲げています。そこでの数値目標を見ると、「高島屋」の今後の戦略が見えてきます。
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(単位:億円)
(「高島屋 2016年2月期決算説明会」より作成)
このグラフから、「高島屋」が特に海外での利益を大幅に拡大しようとしていることが分かります。
「高島屋」海外店舗 現在の業績
では現在、「高島屋」の海外での業績はどれくらいなのでしょうか。
下のグラフをご覧ください。
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(単位:億円)
(2016年2月期)
「上海高島屋」の苦戦が続いています。苦戦の理由として
・立地が良くない。入り口が有名でない道路(紅宝石路×瑪瑙路)の交差するところにあり探しにくい
・「上海高島屋」ではあまり積極的な宣伝活動が行われていない
・中国では知名度の高くない日本ブランドが多く出店している
などが挙げられています。一方、「シンガポール高島屋」はなんと1店舗だけで「高島屋」国内百貨店(19店舗)の約3分の1もの利益を上げています。
「シンガポール高島屋」躍進のワケ
なぜ「高島屋」が、シンガポールでこれほどまで成功することができたのでしょうか。「シンガポール高島屋」はオープンから10年間は赤字続きで、一時は撤退論も出たそうです。そんな困難がありながらも、「シンガポール高島屋」が1993年オープンからこれまでの20数年を生き残ってきた主な理由として2つの「日本独自の百貨店ノウハウ」があります。
ひとつは、「地方の物産展」
元来、日本の百貨店が得意としてきた「物産展」が、シンガポールでの躍進を支えています。「シンガポール高島屋」では、「京都物産展」や「北海道フェア」がとくに人気です。「シンガポール高島屋」の「京都物産展」は、通常の物産展に加えて、舞妓(まいこ)と芸妓(げいこ)のパフォーマンスも行われます。大変好評だそうです。「北海道フェア」では、カニなどの魚介類や、ソフトクリームなどの乳製品が販売されます。こちらは北海道の地元企業約10社が参加しています。
もうひとつは、「日本独自の百貨店売り場」
「シンガポール高島屋」では、いわゆる典型的な日本の百貨店の雰囲気を残し、欧米的な店との差別化を図っています。たとえば、1階の目立つ場所には高級ブランドの店は置かれていません。また、化粧品売り場は1階にあるものの、奥に配置されています。こうしたところに近隣諸国の百貨店とは異なる、日本の百貨店独特の雰囲気を感じてもらうのが狙いだそうです。
この2つの「日本独自の百貨店ノウハウ」を用いたことが、「シンガポール高島屋」の大きな収益源の獲得につながったのです。
「ホーチミン高島屋」の今後の展開
「シンガポール高島屋」で培った、「日本独自の百貨店ノウハウ」が「ホーチミン高島屋」でも実践されるのか注目していきたいです。
1.地方の物産展
2.日本独自の百貨店売り場
2に関して、「ホーチミン高島屋」は下記のフロアガイドになっています。
3階 紳士服・雑貨 / 子供・ベビー / 玩具 / トラベル用品 / メガネ / イベントスペース / カスタマーサービスカウンター |
2階 婦人服 / 婦人肌着 |
1階 化粧品 / 婦人アクセサリー |
B1 婦人靴 / ハンドバッグ/婦人服(ヤングファッション |
B2 食料品 |
地下2階にデパ地下、1階に化粧品売り場、そして婦人服中心の構成です。「日本の百貨店」を彷彿とさせる売り場構成ですね。
「地方の物産展」と「日本独自の百貨店売り場」。この2つのキーワードに注目して今後の「ホーチミン高島屋」を見ていくと、また新たな発見があるのではないでしょうか。