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ベトナムのインターネット事情 -ベトナム情報コラム-

 
2011年6月14日 MSNマネーのコラムに「ベトナムのインターネット事情」が掲載されました。
 
 

 記事全文

 

ベトナムの産業で最も高い成長率を示す情報通信業界

 
ベトナムの情報通信業界はここ5年間は毎年20%以上の成長を続けており、ベトナムの産業の中で最も成長率が高い業界のひとつです。そのため、政府も情報通信技術(ICT)を重点産業としており、2020年までにのICTのGDPに占める割合を8~10%にすることを全体目標としました。
 
 
インターネットの普及率が75%を超えている日本に比べ、普及率約25%のベトナムはどういう状況なのでしょうか?今回はインフラ面、サービス面を考察してみたいと思います。
 
 
2010 年8月末時点のベトナムのインターネット加入件数は2580万件で、人口の27%を占めています。2009年現在で、6事業者がインターネット事業者間の 接続を行えるIXP免許を保有しており、60の事業者がインターネット接続事業者(ISP)免許を保有しています。
 
 
1991年の首相決定に基づき設立された18の国営企業グループの1つベトナム郵政通信グループ(VNPT)を筆頭に、ベトナム最大のソフトウェア会社であるFPT、軍隊通信総公社 (Viettel)の大手3社が熾烈な競争を繰り広げています。
 
 
日系企業では、エヌ・ティ・ティ・コミュニケーションズ株式会社が Viet Nam Internet Network Information Centre (VNNIC)と協業で国際インターネット接続サービスをベトナム国内のISP向けに提供を開始し、ベトナム初となる商用の次世代の通信プロトコル IPv6の提供していく予定です。
 
 
競争による価格の低下もあって、インターネットの利用者は2003~09年の間で年平均で約310万人増加しており、政府は2020年には普及率70%を目指しています。実現すれば10年後には日本と同じようなインフラが整うということになります。
 
 

ベトナムで人気のインターネットサービスは?

 
次にサービス面の現状についてみていきます。Cimigo社の Viet Nam NetCitizens Report 2011によると、ベトナムで最もアクセスの多いwebサイトはGoogleでインターネットユーザーの46%が使っており、検索エンジンにおける89%のシェアを押さえています。
 
 
検索エンジンでは圧倒的にGoogleが支持されていますが、mail・チャットサービスではYahoo!の人気が高く、フリーメールとチャットの利用者の65%がYahoo!を利用しています。eコマースサービスでは、123mua.vnやvatgia.com、chodientu.comと いったオンラインショッピングモールが急速に成長しており、価格比較、ネットオークションなども若者を中心に少しずつに浸透してきています。
 
 
ただ、ベトナムではまだ物流や決済などのインフラが未整備であることから一般化するにはもう少し時間がかかりそうですが、将来の可能性を見越して多くの外国企業も参入してきています。
 
 
vatgia.comは早くからサイバーエージェントの子会社であるサイバーエージェント・ベンチャーズから出資を受けており、その支援でオンライン電子決済サービスを展開するBao Kim E-Commerce JSC社も設立されました。
 
 
chodientu.com を運営するベトナムのソフトウェア会社PeaceSoft社はeBayと2008年に提携し、2011年3月にはebayからの出資を受け入れてベトナム 国内の個人・企業のネットオークションやオンライン決済、広告などの強化を図っています。eBayは電子決済で世界大手のPayPalを傘下に持っている ことから、今後のサービス展開が注目されます。ちなみに、PeaceSoft社にはソフトバンクグループも出資をしています。
 
 
SNSでは、ZingMeというサービスがベトナムでは1番人気があります。音楽やゲームなどを総合的に提供しているZingMeは現時点では1ヶ月の滞在時間、PV数ともにfacebookに勝っていますが、この結果はゲームの人気によるものが大きく、単純なソーシャルネットワークサービスではfacebookの成長がもっとも著しいといえます。
 
 
ベトナムの調査会社ビナゲーム社によると、facebookは政府指定の有害サイトとしてアクセス規制を受けている状況でも200万人以上の登録者を擁しており、ベトナム国内のサイトの月間アクセス数のトップ10に入っている人気サイトです。2011年にはインターネット接続事業を行う前述のFPTと提携を したことにより、アクセスの規制は緩和されていく見通しです。
 

外部資本の導入による体力強化が現地ネット企業のポイント

 
SNS の雄、facebookに対して、ZingMeを運営するVNG Corporation社はサイバーエージェントの子会社サイバーエージェントインベストメントから出資を受けており、音楽やゲームといった強みを生かし たサービス展開で今後もfacebookと凌ぎを削っていくと見られます。
 
 
ここ数年ベトナム国内でもYume.vn, Tamtay.vnなど多くのSNSが注目を集めましたが、ユーザーの増加に伴うサーバー拡張がうまくいかず衰退していきました。ベトナムでインターネットサービスで成功するには、どの段階で外部の資本を受け入れて事業を維持、拡大できるかが重要なポイントになりそうです。
 
 
日本でも類似サービスが林立したグルーポン系サイトは ベトナムでも多く誕生していますが、クーポンを自宅まで郵送して代金を回収するのが一般的であるなど、未熟なインフラ環境下で独自の進化を遂げています。ネットや電話で注文するとその商品を買って自宅まで届けてくれる買い物代行サービスというユニークなサービスも登場しており、Eコマースが爆発的に普及するのは目前に迫っているように感じます。
 
 
株式会社Wacontre(ワコンチェ)代表 野原 弘平