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ベトナムのsim事情について、詳しく考察してみた

 
ベトナムの携帯電話キャリアの競争状況についてご紹介します。

 
 
今回はベトナムで繰り広げられている仁義なき携帯電話業界の競争状況についてご紹介したいと思います。ベトナムでは現在Viettel(ヴィッテル)、Vinaphone(ヴィナフォン)、MobiFone(モビフォン)の上位3社が9割近くのシェアを占める三国志状態の競争が続いています。
 

ベトナムの携帯キャリアの歴史について

 
Mobifone
ベトナム初の携帯キャリアとなったのは、MobiFone。余り知られていませんが、会社名はVietnam Mobile Telecom Servicesといい、ベトナムの郵政公社であるVNPTの100%子会社です。1993年の設立ですので、日本でいうところのNTT DoCoMo的存在です。
 
Vinaphone
ベトナム2番目の携帯キャリアとなったのはVinaphone。なんとこちらもVNPTの子会社です。詳しくはわからないのですが、正常な市場競争を促すための施策でしょうか。(社会主義国ですが・・)。こちらは1996年の設立です。au的存在。
 
Viettel
そして最後にViettel Goupが登場します。ベトナム4番目の携帯キャリアとして2004年に設立されました。それが現在は市場シェア4割を担う絶対王者となっています。運営母体はベトナム軍を束ねるベトナム国防省です。後発参入ということでSoftbank的存在ですが、Viettelは2004年のサービス開始から10年も立たずにトップシェアになりました。
 

市場シェア(2012年売上ベース)と加入者数

 

●市場シェア
1)Viettel (40.67%)
2) Vinaphone(30%)
3) MobiFone(17.9%)
4) Vinamobile(8%)
5) Gmobile(3.2%)
 
●加入者数
Viettel:5890万人
Vinaphone:7000万人
MobiFone:7000万人
Vinamobile:1000万人
Gmobile: 1000万人
合計:2億3690万人

 
「せんせーい、このデータは色々おかしいでーす」という指摘が全校生徒から上がりそうですが、落ち着いてください。先生もわかっていますから。まず、シェアNo.1の絶対王者Viettelの加入者数がVinaphone/MobiFoneより少ないってどないやねんということですが、こちらはシェアの算出方法に問題があると思われます。
 
 
シェアの算出は売上ベースとなっています。通常、携帯電話事業の売上を使うべきところですが、会社全体の売上をベースにしている模様です。軍産複合体、というか国防省直属のViettelは全土に張り巡らされた通信機地と技術力の高さ、そしてアメリカをも撃退した巨大な軍事力を背景に、携帯電話サービス事業のみならず、電話回線事業、インターネット回線事業など、通信インフラストラクチャー事業を多く展開しています。
 
 
そのため、携帯事業をしか持たないMobiFoneやVinaphoneに7000万の加入者がいようと、売上ベースではViettelには遠く及ばないのです。本来なら携帯事業だけの売上ベースでシェアを算出すべきなんでしょうけど、あいにくどの企業も非常上なので正確な決算情報が出てこないのでしょう。
 
 
次に加入者数の合計人数(2億3690万人)。インドネシア並みの人口となっています。ベトナムの人口は現在約9000万人。国民全員に行き渡っていたとしても全然足りません。ベトナムの全水牛にまで調査を広げても2億までは到達しないでしょう。ではなぜか?1人がたくさんSIMを持っているからです。この辺については「ベトナムの携帯事情」に書いてあるのですが、ベトナムでは非常にSIMをが安いのです。300円で買えてしまうのです。1人が2枚も3枚もSIMカードを所有していることから、合計のSIM発行が2億を超えてしまったというわけです。
 
 
と、ここまではWikipediaの情報参考にしていたのですが、ワコンチェの追加調査により、最新情報を入手したので下記にまとめます。
 

ベトナム携帯キャリアの再編はいかに

 
MobifoneとVinaphoneは同じ郵便公社の所有になっていたのですが、2009年に策定された通信法により、通信会社の20%以上の複数所有が制限されたため、ベトナム郵政公社(VNPT)はVinaphoneと共に歩むことを決めMobifonを捨てたわけです。
 
 
所有権の以上についてはつい昨日、2014年7月12日に完了したようで、ベトナム情報通信省の管轄になりました。75%はベトナム政府が保有し、残りの25%は外資を含む一般の投資家に所有されるそうです。一般公開されていないのでどのように株式を買うのかは不明ですね。Mobifoneを手放したベトナム郵政公社(VNPT)はVinaphoneと共に新会社を設立し、VNPT-Vinaphoneという新会社を設立すると発表されています。
 
 
これまではベトナム軍系公社のViettelとVinaphone/Mobifoneを擁するベトナム郵政公社VNPTグループの戦いでしたが、Mobifoneの分離で新たな戦いが始まりそうですね。そのMobifoneは情報通信省の庇護の下、モバイル通信事業意外の領域にも事業を展開していくとされています。携帯サービスキャリアの管轄省庁である情報通信省がついているというのは心強すぎます。陳述したらすぐ法律変えてくれそうですね。
 
 
2013年に300億円もの利益を出したMobifoneの市場価値は約2000~3000億円。それが今回の分離により経営権の自由度が増したことにより、4000億円程度の価値になりうるとの予想もあるようです。Mobifone、買いですね。(普通の人は買えませんが・・。)そして圧倒的な絶対王者Viettelはベトナムの他、ラオス、カンボジアでトップシェア、ハイチ、 ペルーとモザンビークでも大型投資をして市場に参入しています。2013年の売上高は驚きの162.8兆ドン(≒77億ドル≒7700億円)。利益額も35兆ドン(≒16億ドル≒1600億円)と優秀です。
 
 
2013年の情報通信白書による携帯サービス業界の最新市場シェアは下記になります。
 

Viettel (40.05%)
MobiFone (21.4%)
VinaPhone (19.88%)
Vietnamobile (10.74%)
Gmobile (3.93%)
SFone (0.01%)

 
 
ベトナム軍率いる絶対王者Viettelと郵政公社(VNPT)と一体になったVinaphone、情報通信省傘下で自由を得たMobifone。ベトナムの省庁の威信をかけた携帯サービス業界のシェア争奪戦は今後も激しい戦いが繰り広げられそうです。